お知らせ


【第九話】伊豆七不思議『大瀬明神の神池』

 伊豆には『伊豆七不思議』と呼ばれる場所や伝説があります。
①堂ヶ島のゆるぎ橋②石廊崎権現の帆柱③手石の阿弥陀三尊④河津の酒精進鳥精進⑤独鈷の湯⑥函南のこだま石と、今回ご紹介する『⑦大瀬明神の神池』です。
 松濤館から西に車で20分ほどのところに大瀬崎(おせざき)という岬があります。大瀬崎には大瀬神社(大瀬明神)があります。大瀬神社は正式には引手力命神社(ひきてちからのみことじんじゃ、ひきたぢからのみことじんじゃ)といい、創建は白鳳13年(684年)と古く伝統のある神社です。平安時代末期には、源為朝と源頼朝、北条政子が源氏の再興を祈願して弓矢、兜、鏡、太刀などを奉納したそうです。古くから海の守護神とされ、海上安全と豊漁を祈願して奉納する風習が現在も続いています。
 大瀬明神には境内に神池と呼ばれる池があります。駿河湾に向かって突き出した細長い岬の先端近くにある直径が約100mほどの池です。池の周りは推定樹齢1000年以上とされる約130本のビャクシンの樹林(国の天然記念物)で囲まれていて、日本最北端の自然群生地とされています。
 神池は海から最も近い距離が20mほどしかなく標高も1mほどです。地下から海水が混ざり込んだり、海が荒れた日には海水が流れ込む可能性があるにもかかわらず完全に淡水の池であり、コイやフナ、ナマズなどの淡水魚が多数生息しています。
 海に囲まれているのに淡水である理由は、直線距離で約35キロ離れた富士山から伏流水が湧き出ているという説があります。その証拠として沼津市の原地区で田植えをすると、その影響を受けて神池の水が濁るといわれています。また、不思議なことに海水面の上下で水面の高さが変化するともいわれており(変化していないという説もあります)、淡水池である理由は全く解明されていません。
 神池は神社の境内にあるため神域とされており、池を調べたり魚や動植物を獲ったりする者には祟りがあると古くから言い伝えられています。また、調査のために機材や人などが池に入ると環境破壊となる可能性があることと、水の透明度が低く池の底の観察が難しいと考えられることなどから詳しい調査はなされておらず、水深すらわかっていません。
 神池は神社内にありますので、見るためには拝観料100円を納めます。また、拝観時間は日の出から日没までとされています。神社の拝観所や池のそばに餌の自動販売機があり、餌を与えるとたくさんの鯉などが集まってきます。