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【第八話】桜海老は駿河湾の宝石

 駿河湾での桜海老漁が始まったのは1894年(明治27年)のことです。由比の漁師が、アジ漁をする際に網を浮かせるための樽を忘れてしまい、仕方なくそのままの網を深く落としたところ、深海に生息する大量の桜海老が偶然に捕れたことが始まりとされています。桜海老はその名からわかるようにきれいな桜色をしているのが特徴です。こういった赤い生き物は深海に生息しているものが多く(キンメダイ、ノドクロ、アカウオ、カサゴ、アコウダイ、キンキ、ホウボウなど)、桜海老も昼間は水深200~300 mほどの深海を群れで遊泳しています。
 国内の桜海老は100%駿河湾産です。駿河湾は中央部が深海になっており、また富士川、安倍川、大井川といった大きな河川からの栄養分が大量に流れ込んでいることから絶好の生息地となっているものと思われます。東京湾や相模灘でも生息していますが漁獲対象とはなっていません。また、遠くは長崎県の五島列島沖に生息していることがごく最近(2019年)の調査でわかりましたが、こちらも漁獲には至っていません。国外では台湾でも獲られていて、日本への輸入も増えてきています。台湾産と区別するために、駿河湾のものは「由比桜海老」と「駿河湾桜海老」の二つのブランドをつくり全国に販売しています。駿河湾産は台湾産よりずっと甘みや旨味が多いそうです。糖度計で計ってみると駿河湾産は格段に甘いことがわかります。桜海老の漁期は年二回で、4月から6月までの『春漁』と10月から12月までの『秋漁』になります。6月11日から9月30日までは繁殖期のため禁漁となります。また冬は桜海老が深く潜ってしまうため漁ができません。春漁の桜海老と秋漁の桜海老では味が異なります。春漁のものは孵化した夏から時が経ち成長しているので、ヒゲも長く殻が少し硬くなっていますが、成長した海老の旨みがたっぷりとあります。秋漁の桜海老は、孵化したばかりで殻が柔らかいので生食がおすすめです。生食をする場合はヒゲを取ったほうが食べやすくなります。一本一本取るのではなく、冷水に桜海老を入れて割り箸でかき回すとヒゲが一気に取れます。
 ここ数年は桜海老の深刻な不漁が続いています。2017年の漁獲量は1,132tでしたが、2018年は312tと、たった1年で約70%以上も減少してしまいました。その後2019年は175t、2020年は128tと低迷しています。そのため投網時間を制限したり禁漁区を設定するなど漁獲量を調整したり、保護のために漁船数を制限したりしています。
 年々希少となる桜海老ですが、その用途は多様でいろいろなレシピで食卓を楽しませてくれます。当館のお土産にも桜海老をご用意いたしております。どうぞご利用くださいませ。