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【第七話】大瀬まつり・内浦漁港祭

 松濤館から西へ車で20分ほどのところに大瀬崎(読み方は:おせざき)という岬があります。毎年4月4日の一日のみ、この大瀬崎と松濤館の近くの内浦漁港で『大瀬(おせ)まつり・内浦漁港祭』が開催されます。
 大漁旗や紅白幕、杉や桜の枝で色鮮やかに装飾された漁船が、駿河湾での豊漁と安全を祈願するために大瀬神社に向けて出港します。大瀬神社は正式には引手力命神社(ひきてちからのみことじんじゃ、ひきたぢからのみことじんじゃ)といい、創建は白鳳13年(684年)と古く伝統のある神社です。平安時代末期には、源為朝と源頼朝、北条政子が源氏の再興を祈願して弓矢、兜、鏡、太刀などを奉納したそうです。古くから海の守護神とされ、海上安全と豊漁を祈願して奉納する風習が現在も続いています。
 この大瀬まつりは、『天下の奇祭』と呼ばれています。日頃は剛猛な漁師たちがこの日は顔を白く塗り、紅で化粧をして女性が着る長襦袢を着ます。女装した漁師たちは漁船の上で『勇み踊り』を踊ります。『勇み踊り』とは、お囃子に合わせて「ちゃんちゃらおかしー、ちゃらおかしー」と掛け声をしながら、日の丸の扇子を持って踊ります。(漁師の地域によって踊りが違うそうです)
 船が岸壁に到着すると、船から海に向かって福俵を投げられます。それをその年はじめて船に乗り込んだ『小若衆(こわかいしゅう、独身で長男)』が先頭に海に飛び込んで拾い上げて岸まで泳ぎ、神社に大漁と航海の安全を願って大瀬神社に参詣します。高台にある大瀬神社に向かって階段を駆け上がる女装した漁師の姿は滑稽ながらも勇壮です。その後、浜辺の石を拾って船に取り付け、船上で再び勇み踊りを踊りながら帰路につきます。この様子は岸からも見ることができますが、当日は大瀬参り参拝船が出航しますので、船上からの観覧もできます。また、この祭事に合わせ当地域では「雛飾り」をこの期間まで飾るというのも一つの習わしとなっております。
 さらに同日には松濤館の近くで行われる内浦漁港祭(本年は中止)では、大瀬神社に参拝し大漁旗で飾られた船が漁港に集まり、お囃子が鳴り響く中、賑やかな船のパレードを見ることができます。漁港では新鮮な水産物や地元の名産品の販売、太鼓演奏、福引きなどもあります。たった1日のお祭りですが、もしお日にちが合えば是非お越しください。

(44) 大瀬まつり:大瀬神社例大祭 – YouTube