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【第二話】氣多神社と宮脇城

 日本を代表する邦画『男はつらいよ』シリーズの中『 寅次郎心の旅路(第41作・1989年8月5日公開)』がございます。シリーズ唯一の海外ロケ(寅さんが出ない海外ロケはほかにもあります)で、なんと寅さんがウイーンに行くことになります。ウィーンが舞台になったのは、当時のウィーン市長であるヘルムート・ツィルク氏が1986年の訪日の際に航空機内で『男はつらいよ』シリーズを観て感銘を受けて招致したということです。本作はほぼすべてウイーンロケでしたが、エンディングではなんとここ松濤館のある内浦三津が登場します。場所は松濤館から歩いて2~3分のところにある『氣多神社』です。寅さんが縁日でお決まりの啖呵売を行います。神社ではお神輿が担がれ、奥に見える海には大きな大漁旗を掲げた漁船が海を走るのも映されました。
 氣多神社の御祭神は意氣長多羅司姫命(おきながたらしひめのみこと)で古事記では息長帯姫大神と記載されています。神功皇后という呼び名のほうが有名でしょう。仲哀天皇の后で応神天皇の母である神功皇后は、女神ですが武神としての性格を持っています。また、母子神信仰とも深く関係し、鎌倉時代には神仏習合により聖母大菩薩とも呼ばれていました。
 この氣多神社の裏山には宮脇城跡があります。神社の右側を道なりに上って行き、左へ上がる山道を進むと3分程で城址に着きます。宮脇城は静岡古城研究会によって平成14年に発見された城です。史実などの詳細は全くわかっていませんが、戦国時代の北条氏に仕えた富塚善四郎の城といわれています。わずかに曲輪(城郭の中の平場)と堀切が残っています。氣多神社の横から続く尾根に主郭を置き、背後を一条の堀切を入れただけの極めて小さい城です。
 松濤館の近くには宮脇城だけでなく数多くの城跡や砦跡があります。古墳時代の遺跡も発見されいることからこの地は古来より多くの人が住み、または要衝として重要な地であったのでしょう。